古文書をきっかけに鶴ヶ丸八幡神社に安置、県立博物館で展示中
江戸幕府を開いた徳川家康が没して400年となる今年、川口市芝の鶴ヶ丸八幡神社で「木造東照大権現 (徳川家康座像・御束帯木刻之尊像)が見つかり、現在さいたま市の県立歴史と民族の博物館で特別展「徳川家康-語り継がれる天下人」(毎日新聞さいたま支局等後援・27日まで)の展示品発掘にあたっていた同館学芸員が発見し、同展で展示している。
川口市の郷土史家の間でもこれまで存在は知られておらず、「新発見ともいえる資料」と喜んでいられた。
座像発見のきっかけは、江戸時代に徳川家に保護されていた長徳寺に残っていた「東照大権現神祠」と題された古文書。1795年(寛政7年)に江戸幕府が全国の有力寺社に行った東照宮に関する調査で長徳寺が提出した回答の控えで、境内に1626年(寛永3年)に建てられた東照宮内に「7寸(約21センチ)の御束帯木刻之尊像」が安置されていると記されていた。学芸員は「典型的な神像形式の木造徳川家康像に間違いないと確信して調べたが、長徳寺周辺では発見出来なかった。
東照宮はその後、同じく1626年に芝村の代官・熊沢忠勝によって創建されていた鶴ケ丸八幡神社に合祀されたことが分かったことから、同神社に依頼し、今年7月に神社側から「尊像らしいものがある」との連絡を受け、厨子に収められていた家康座像を確認した。高さ21センチの台座を含めると全高約40センチ。刀と笏は紛失していたが、県内で既に確認されている4体と比べても最大級で、赤、黒、金の彩色が鮮やかに残っているのも大きな特徴だ。
江戸時代、家康にゆかりのある場所に建てられた東照宮は現在、全国で700確認されており、家康が鷹狩りで訪れたところは、県内に70以上あるという。学芸員は「今回の座像は、残っていた古文書の記述通りに見つかったことも異例と話されていた。