自然的原因による土壌汚染の費用負担判例について
最近良く問題になる土壌汚染ですが、売主が食品工場だった土地を売却し、契約書に「売主は、本物件が特定有害物質を使用しない食品工場であり、事業主由来の土壌汚染が存在しえない事を理由に土壌汚染の調査を行わず、土壌汚染の調査は、買主の負担により実施するものとする。」「土壌汚染調査の結果、環境省の環境基準及び自治体に指導基準があるときにはその基準を上回る土壌汚染があった場合は、買主は汚染の範囲及びかかる費用を売主に明示し、売主は土壌改良もしくは除去の費用を買主に支払うものとし、買主は自ら土壌改良もしくは除去を行うものとする。」と定めました。
その後、買主の調査で10地点のうち1地点から土壌汚染対策法に定める特定有害物質である砒素が、環境基準を若干超える値で検出されました。買主から汚染除去を請求されていますが、砒素による汚染はもっぱら自然的原因によるものと思われ、当社には汚染処理費用を負担する必要はないと争った裁判ですが…………。
不動産売買に付き、後から判明した土壌汚染を巡って紛争が発生しておりますが、近時東京地裁で平成23年に事実認定の事例判決が出ました。
「環境基本法に基づいて環境省が定めた土壌汚染に係る環境基準においては、汚染がもっぱら自然的原因によることが明らかと認められる場所に係る土壌については、環境基準を適用しないこととしている。
上記契約条項は、自然的原因による場合に環境基準を適用しないこととしている環境基準と同じ趣旨で環境基準を引用しているものと解するのが法令に照らして自然な解釈であります。
そして、土壌汚染が専ら自然的原因による場合は、環境基準が適用されないのであるから、契約解釈にあたっても、この場合は、契約条項において被告が汚染処理費用を負担する原因として定められた「環境省の環境基準を上回る土壌汚染があった場合」に含まれないと解するのが、当事者の合理的な意思解釈であります。
結局、買主に汚染処理費用の負担をしなくてよいと判示した判例ですが、地裁判決ですがご参考まで。