相続の代が進むと所有者調査等が困難になる場合も!
街中で、手入れをされていない荒れた空き家を見かけることがあります。空き家になっている理由は様々だが、中には所有者が不明であるために、空き家の状態が続いているものもある。
不動産の所有者は法務局にある不動産登記簿で確認が出来るが、登記簿上の所有者が死亡しているなどして、現在の所有者が不明になっている不動産も多い。
なぜ、登記簿に現在の所有者の名前が載っていないのか?
日本では不動産権利の登記は任意です、登記には手間やお金がかかるので、不動産を相続や売買で取得された方が登記の必要性を感じず手続きをしなければ登記簿上は前の所有者のままとなり、実態とズレが生じてきます。相続の場合は代が進むとさらにズレが広がり誰が現在の所有者なのかすぐにはわからなくなります。
相続では ”法定相続人” が増えるので、解決はますます困難になります。
権利の登記が任意なのは、日本の不動産登記制度がフランス法の考え方を取り入れているからであります。
フランス法では、第三者に「ここは自分の土地」と権利を主張するためには登記を必要とする、という考え方を取っています。ドイツ法のように登記しないと権利の変動そのものが成立しないという考え方もありますが、日本では採用されておりません。
所有者把握に課題があり、法改正にはずみも!
不動産には固定資産税が掛かりますが、登記制度とは別に行政は現在の所有者を把握しているはずだが、残念ながら所有者情報の把握の仕組みには課題が多く、市町村は法務局の登記情報に基づいて固定資産税を課税している。
戦前は税(地租)を徴収する税務署が土地台帳で所有者情報を管理していたが、戦後は土地台帳が登記簿に一元化された。そのため相続登記が行われない不動産については、自治体の税務担当者が相続人調査を行って現在の所有者を特定し、課税しなければならない。
しかし、相続登記が長年放置される不動産は免税点(課税対象にならない資産額)未満のものも多く、課税対象にならなければ自治体が人員を割いて調査するインセンティブが働かず、事実上後回しになります。
この問題を解決するために政府も腰を上げて、法務省は、「登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会」を発足させ、法改正を視野に入れた議論をスタートさせる。
民法や不動産登記法を見直すとなれば、議論に長い時間がかかり、この問題に特効薬はありません。同時に登記の手間やコストを下げたり、所有者不明の土地の受け皿を整えるなど、様々な対策を積み重ねていくことが大切だと思われます。