4月からの改正で使いやすく
相続で空き家になった親の住まいを相続人が売り、一定の条件を満たした場合、譲渡所得から3000万円を控除できる制度が2016年4月に導入されました。
しかし、このルールは使い勝手が非常に悪いとの話しが多く、このため国は19年度の税制改正で、この制度を適用するハードルを下げました。今回はこうした問題を受け、19年度の税制改正で、4月1日以降に売却した場合、老人ホームに転居していても以下の条件を満たせば3000万円の控除が認められるルールに変わりました。
① 被相続人が介護保険法に規定する要介護認定などを受け、かつ相続開始の直前まで老人ホームなどに入所していたこと
② 被相続人が老人ホームなどに入所したときから相続開始の直前まで、その家屋について、その者による一定の使用がなされ、かつ事業の用、貸付の用又はその者以外の者の居住の用に供されていたことがないこと
この特例を受けるには、相続発生後、3年を経過する年の12月31日までに相続した空き家を譲渡する必要があります。つまり、16年1月2日以降の相続で、かつ本年12月31日までに譲渡すれば適用される可能性があります。
親が一人で住んでいた実家が空き家になったままであらば、今回の改正でこの特例の適用を受けて売却を検討してみるのもよいでしょう
「所得費加算の特例」とは併用できず
特例の譲渡価格の上限が1億円とされており、被相続人の居住用家屋及び土地を取得したすべての相続人の譲渡対価の額で判定するルールがあります。
相続税を支払った場合、相続の申告期限の翌日から3年以内に相続をした不動産を売却すると、かかった相続税のうち一定金額を譲渡資産の取得費として加算できる「取得費加算の特例」もあります。譲渡取得を減らす効果があり、いわば相続した不動産を売却すると相続税が安くなる特例です。
こちらの特例は3000万円の特別控除と併用できないので、どちらを選択すべきかについては慎重にご検討下さい。